忘れないうちに

いろんなことをすぐ忘れる。

高度医療は発展し続けているが、人間の脳自体をアップデートしてそのCPUとメモリを脳内に増設する術はまだないのだろうか。

それどころか最近は検索エンジンとスマホという名のAI技術が人間の脳にとってかわっているため、我々本来の脳が持つ力って猛攻撃にさらされている気がするの。

楽しかったことも、すごく好きだった作家とかアーティストの名前も、いつか行った遠い国の土地の名前も、そこで会った親切な人の名前も、珍しい料理の味も、どんどんどんどん忘れていく。

瞬間を掴まえたい。
カメラはいらない。
自分の心にだけぜんぶ留めておきたい。

野外パーティに住んでるんですか?っていうくらい毎週パーティからパーティへ移動して暮らしていた若い頃、そんな謎の「瞬間イズム」を胸に生きていた。

36歳になったいま思う。


だいたい全部忘れた。


いまもし私が23歳の自分に会えるなら、とりあえず「お前の記憶力を過信するな」と言いたい。

あんたが今「この気持ちは絶対ババアになっても忘れない」と思ってることの大半を、私はもう思い出せない。

決して若い頃に戻りたいわけではない。

若い娘だった頃の私なんてたいがい行き過ぎた自意識の塊だったし、不器用で人に振り回されてばかりで、いまのほうが100倍生きててラクだし楽しい。

でもあの頃なにか心動かされたものがたくさんあったはずなのだけど、その多くが忘却の彼方に消えてしまった。

あれは一体なんだったんだっけ。

いまこうしていることも、いずれ忘れていく。

いま世界は体験したことのない状況に陥って、人々はこれまでに見たことのない景色を見て思ったことのないことを思っているけど、それもいつかは忘れる。

忘れないうちに、どこかに記しておかなければならない。


いまは日記をつけるのに最適な時だと誰かが言ってた。

いまのことを忘れないうちに留めておくのもそうだが、忘れてしまったことを紐解いていくのにも、いまはいい時間だと思う。

断片的な記憶をたどって、私が通ってきた道を振り返ってみよう。

そして忘れないうちに、書き留めておく。


アイキャッチ画像は2013年のパイレーツリトリート。

これはバリのGili Nanguuという離島にフーパー、ジャグラー、ファイヤーパフォーマー、DJが集まって生活を共にするという企画。

当初は主宰・Jayの仲間内が集まって「無人島で自分たちだけの時間過ごそうぜ」なノリだったのだけど、今は毎年数十人が集まるリトリートに成長した。

あの時は水道すら通ってなくて、海水のシャワーで髪バリバリになってた無人島も最近は観光客が増えて水道も通ったらしい。

自分たちしかいない、マジで映画「The Beach」の世界そのまんまだったあの頃もよかったけど。

旅人たちはそうやって新しい「未開の地」を開拓し続けてきたわけだけど、Covid-19によって旅の価値観も変化せざるを得なくなっていくのかな。

自由にどこにでも行けた時代が恋しい反面、「どこにでも行ける」という無限の選択肢がないことは、ある意味楽でもある。

最初から選択というプロセスがないこともそれはそれで幸せなのかもしれないね。

なんてことを、おひるね後のぼんやりとした頭で考えている。


Photo by Brian Neller