バーチャルTinderツアー Vol.3_Italy

・バーチャルTinderツアー Vol.1〜2はこちら

イタリアのFrancescoからこのビデオが届いたのは、6月に入ってからだった。

彼はプロのフィルムメーカー/フォトグラファーで、普段はTorinoの都市部で生活しているがFinale Ligureという海辺の小さな町にも拠点を持っている。

ロックダウン中はずっとFinale Ligureで過ごしていて、撮影の合間に撮った町の風景を集めたのがこのビデオとのこと。


日本で生まれ育ったはずなのに、なぜかすごく懐かしさを感じる町並み。

美しいビーチには立ち入り禁止のテープが貼られ、通りには人が全然いない。

まるで映画のセットみたいなこの空間。

撮影者である彼らだけが、この瞬間この場所に存在したかのよう。

人間たちの存在が綺麗に切り取られた風景は、世界が終わって誰もいなくなったあとの、エピローグみたいにも見える。

だーれもいなくなって、でも地球だけは回っているのだ。

Francescoの写真はインスタグラムでも見られます。
Instagram_@francescoms

バーチャルTinderツアーと称して、Tinderのパスポート機能を使ってスマホ上で旅に出たのが4月のこと。

当初は4月30日まで無償提供される予定だったパスポート機能は、世界的にロックダウンが長引いたせいか結局GW明けくらいまで延長された。

これは暇を持て余した私にとっての遊びであり、実験だった。

最初はとりあえず1,000マッチしてみて何が起きるか考えよ、と思っていたのだが、500〜600マッチくらいしたところで

「仮にパンデミックが収束して安全に旅できるようになった時、国境を越えてでも会ってみたいと思える相手でないとこれは面白くないな」
という結論に至った。

マッチした人たちは大体みんな親切に各国の状況を教えてくれたり、心情を語ってくれたりした。

ただ5月に入りパスポート機能の提供も終了し、徐々に各国でロックダウンが解除され始めた。

となると、それまでのように遊びでバーチャルツアーをしている人たちもTinderランドからいなくなり、皆だんだんと近くにいる人とのリアルなデートを求め始める。

私はTinderの設定を開き自分のプロフィールを「非表示」にした。

(こうするとすでにマッチしている人とメッセージはできるけど、Tinder上に自分が表示されなくなるのです)

別に近所で会える人とかを探したいわけではないので、また私がTinderランドに現れることも当分はないだろう。

バーチャルツアーはこれにて終了だ。

私のTinderツアーは、今後もし機会があったら普通に会おうと思える、もしくは会うことがないとしても意義のあるコミュニケーションの取れる相手だけとの、デジタル文通に着地した。


このTinderツアーでは、結局Francescoを含む数人との出会いがあった。

いや実際には会ってないんだけど。


この実験で知りたかったのは「オンラインでどこまで精神的・情緒的に出会いを感じられるか」だった。

旅先ですれ違いざまに一言二言を交わしただけの相手と「出会った」という感覚は抱きづらいが、それがお互い印象に残るような深い会話だったらどうだろうか。

バス停に居合わせた他人との会話がきっかけで、人生の選択が変わるようなことだって時にはある。

単に「知らないひととメッセージのやり取りをした」という事実だけでなく、お互いの世界観に触れて何か影響を受けたり、新しいことを学んだりといった化学反応が起きたならばそれを「出会い」と呼ぼう。


オンラインで、しかもTinderという「情緒的な出会い」とは程遠そうなツールで知り合った4名は、フィルムメーカー、アニメーター、サウンドエンジニア、イラストレーターと、それぞれに何かを創っている人たちだった。

最近こんなものを作ったとか、制作へのパッションとか、政治や人権のこととか、お互いのルーツとか、なんかそんなことをダラダラと話している。

私達はどこか旅先で出会って住所を交換し、家に帰ってからも文通している、近くも遠くもない友人みたいだ。

ふとした時に、ああそう言えば会ったこともないんだったな、と思い出す。

これはこれで、ひとつの出会いなのだろう。

Francesco氏のウェブサイトも置いておきます。
https://www.fmsvisual.com/project

過去にNYの街並みを撮った写真も何故かすごい静けさに満ちていて、どこを撮ってもエピローグっぽくなるのは、この人のスタイルでもあるんだなきっと。

普段はアーティストのMVやコマーシャルとかの仕事が多いそうです。
https://frana.myportfolio.com